大阪の四つのオーケストラがフェスティバルホールに再び集結します。4月24日に開かれる「大阪4大オーケストラの饗演」は、大阪フィルハーモニー交響楽団、関西フィルハーモニー管弦楽団、大阪交響楽団、日本センチュリー交響楽団が個性あふれる演奏をぶつけ合う、お祭り感たっぷりのコンサート。「大阪国際フェスティバル」の目玉企画として昨年初めて開催され、大きな反響を呼びました。
「4オケが集まるというとてつもない発想は実に大阪らしい」と関西フィル桂冠名誉指揮者の飯守泰次郎さん。センチュリー響首席指揮者の飯森範親さんも「東京ではベートーベンの全交響曲を一日で演奏することはできても、全オケが出演するコンサートは難しい」と話します。東京には日本オーケストラ連盟正会員だけでも九つもの楽団があり、確かに物理的に困難ですね。
感覚的にも、競争相手と同じ舞台に立つことは「東京では考えられない」と大阪フィル首席指揮者の井上道義さん。「でも、大阪の感覚としてはこういうのもあり。突き詰めれば、大阪の人が面白がってくれればいい」
大阪だからこそできる全オケ共演。各オーケストラ事務局や舞台スタッフにふだんから交流があったことも実現の大きな力になりました。「昨年のスムーズな連携には本当に驚かされた。助け合って一緒にやろうじゃないかという気質が見えました」(センチュリー・飯森さん)
何より、こう言う企画を楽しむ観客の存在が実に大阪らしい、と指揮者たちは口をそろえます。
さて、第2回、指揮者のみなさんはどんな意図でどんな曲目を選んだのでしょうか。
大阪交響楽団を率いる外山雄三さんは今年85歳になる指揮界の大ベテラン。大響のミュージックアドバイザーに今月、就任したばかりです。20世紀を代表するロシア出身の作曲家ストラビンスキーのバレエ音楽「かるた遊び」を演奏します。
「大響は非常に若いオケ。演出しなくても若さが出る。どうしたらより豊かな音楽をつくれるか、一緒に探求していきたい。今回はストラビンスキーをきっちり練習してきっちり組み立ててお聞かせする、それだけを考えています」
大阪フィルの井上さんはフランス音楽で勝負します。ラベル「ダフニスとクロエ」第2組曲。
創設指揮者・朝比奈隆さんが力を入れた重厚なドイツ音楽のイメージがいまも根強い大フィルですが、井上さんは「大フィルを大阪のオケ、話し好きで饒舌で人生を楽しんでいこうという人々のいる地域のオケとしてとらえるなら、もっとラテン的な音楽をやってしかるべき」と考え、積極的にフランス、スペインや南米の音楽を取り上げてきました。
「ラベルのような(繊細な)曲で大フィルがいい音を出せなければ話にならないと思っている」
関西フィルの飯守さんは東京の新国立劇場オペラ部門芸術監督でもあり、ワーグナーのオペラがライフワーク。今回もワーグナー、楽劇『トリスタンとイゾルデ』から「前奏曲と愛の死」です。
「ワーグナーの音楽をつくるには時間がかかります。関西フィルとは約20年のお付き合い、ワーグナーの共演を重ね、時間をかけてみっちり音楽をつくっていく関係が実現しつつあります。その成果を披露したい」
センチュリー響の飯森さんは「指揮界の先輩たちの胸を借りるつもりでベートーベンの『運命』を指揮させていただきます」。2015年度からハイドンの100曲を超える全交響曲を演奏する「ハイドン・マラソン」をスタート、ドイツ音楽の和音や旋律のつくり方を探求しています。その延長線上にある作曲家としてベートーベンに取り組みたい、と抱負を語りました。
外山さんが80代、飯守さんが70代、井上さんが60代、飯森さんが50代。大阪の各オーケストラの個性と共に、様々な年代の指揮者を聴くチャンスでもあります。(佐藤千晴)
写真は4人の指揮者たち。(左から)大阪交響楽団・外山雄三、関西フィル・飯守泰次郎、大阪フィル・井上道義、日本センチュリー響・飯森範親
大阪4大オーケストラの饗演
2016年4月24日(日)17:00
フェスティバルホール(大阪・中之島)
*16:40から指揮者たちのプレトークあり
【出演と曲目】
外山雄三指揮 大阪交響楽団
ストラビンスキー バレエ音楽「かるた遊び」
井上道義指揮 大阪フィルハーモニー交響楽団
ラベル 「ダフニスとクロエ」第2組曲
飯守泰次郎指揮 関西フィルハーモニー管弦楽団
ワーグナー 楽劇『トリスタンとイゾルデ』から「前奏曲と愛の死」
飯森範親指揮 日本センチュリー交響楽団
ベートーベン 交響曲第5番「運命」