舞台と客席が一緒につくる豊かな時間 指揮者大友直人さんに聞く

インタビュー

大阪市主催のクラシックコンサート「Enjoy! オーケストラ Part2」が2016年3月3日(木)19時から大阪市のザ・シンフォニーホールで開催されます。若い世代やクラシック初心者の大人にもオーケストラの楽しさを伝える企画です。子どもや中高生がステージに上がって演奏を聴けるコーナーが名物。食い入るようにオーケストラを見つめる子どもたちの姿は、客席から見る大人にも楽しいものです。

指揮は大友直人さん、演奏は大阪フィルハーモニー交響楽団。10月の「Part1」に続いての登場です。今回は「オーケストラの楽器」をテーマに、木管楽器、金管楽器、弦楽器、打楽器……様々な楽器の音色に焦点を当てます。

大友さんは東京交響楽団の「こども定期演奏会」(年間4回)を2002年から12年間、サントリーホールで手がけました。京都市交響楽団でも常任指揮者だった2003年に「こどものためのコンサート」を始め、子どもたちに本物の音楽を届けることがライフワークの一つです。
大友さんにこの演奏会についてお話をうかがいました。

「『Enjoy! オーケストラ』のコンセプトは、定期演奏会の常連や長年のオーケストラファン以外にも本当のシンフォニーコンサートの醍醐味を感じていただくこと。常日頃から演奏会には全力投入を心がけていますが、このコンサートにいらっしゃるのは一期一会のお客様、強い思いを込めています」

東京生まれの大友さんは小さい頃からオーケストラファンで、小学校4年生でNHK交響楽団の定期会員になったそうです。
子ども時代の音楽経験を「小学生の頃にシュトックハウゼンなど現代音楽もごく自然に聴いていました。ところがモーツァルトの楽しみ方は分からず、マーラーの方がドラマティックで良かった」と振り返ります。
「大人が考える『子ども向け』と、子どもの感性はずれているのではないでしょうか」

3月3日の演奏曲目は、バッハやモーツァルトもありますが、現代日本の作曲家芥川也寸志さんの作品や、大友さんが愛する英国の作曲家からブリテンやエルガーも取り上げます。

 「10月の『Part1』で一番人気があったのは、吉松隆さんの曲でした。子どもたちは『響きが新鮮だった』とアンケートを寄せてくれました」

「本物のシンフォニー」と並んで大友さんが大切にしているのは「ステージと客席の一体感」。

「野球やサッカーなら『きょうは楽しもう!』と積極的な気持ちで出かけ、選手と一体になって楽しむでしょう? ポピュラーコンサートも同じですよね。でもクラシックは客席で緊張する方や、『きょうはここが出来ていない』と減点法で聴く方も結構いらっしゃる。舞台の上の音楽家も評価を下される気持ちになってしまいます」

大友さんは子ども向けコンサートで、ささやくような小さな音にみんなで耳を傾けたり、「静寂をつくってみましょう」と音のない時間を体験したりの実験をすることがあります。客席に呼びかけて「普通の拍手」と「気持ちのこもった拍手」をしてみると、その響きの違いにみんなびっくりするそうです。

「ピアニシモの音も静寂も、会場のみんなが耳を傾けなければ生まれません。ホールでは舞台の上の音楽家も客席のみなさんも一緒に豊かな時間をつくることが一番意味のある、面白いことなんですよ」

トークの名手でもある大友さん。「ホールの全員が一緒につくる豊かな時間」も指揮してくれることでしょう。(聞き手・佐藤千晴)

大阪フィルハーモニー交響楽団ホームページ

大友直人 おおともなおと
東京生まれ。桐朋学園大学を卒業。指揮を小澤征爾、秋山和慶、尾高忠明、岡部守弘各氏に師事した。22歳で楽団推薦によりNHK交響楽団を指揮してデビュー。
現在、群馬交響楽団音楽監督、東京交響楽団名誉客演指揮者、京都市交響楽団桂冠指揮者、琉球交響楽団ミュージックアドバイザー。また、2004年から8年間にわたり、東京文化会館の初代音楽監督を務めた。
第8回渡邊暁雄音楽基金音楽賞(2000年)、第7回齋藤秀雄メモリアル基金賞(2008年)を受賞。

「Enjoy!オーケストラ~オーケストラの楽器~」

日時:2016年3月3日(木)19時開演(18時開場)

会場:ザ・シンフォニーホール(大阪市北区大淀南2-3-3)
JR環状線「福島」駅下車、徒歩7分/JR東西線「新福島」駅、阪神「福島」駅下車、徒歩10分

入場料(全席指定)
学生 800円
一般 1,500円
*学生券は小学生から高校生までが対象です。当日、学生証などの身分証をご持参ください。
*未就学児は入場できません。

<出演>
指揮:大友直人
司会:好本惠
オルガン独奏:片桐聖子
管弦楽:大阪フィルハーモニー交響楽団

<曲目>
J.S.バッハ/トッカータとフーガ ニ短調より (オルガン独奏)
J.S.バッハ/トッカータとフーガ ニ短調より (ストコフスキー管弦楽版)

〔木管楽器の音色〕
モーツァルト/セレナード 第10番 変ロ長調 K.361「グラン・パルティータ」より第7楽章

〔金管楽器の音色〕
デュカス/バレエ音楽「ラ・ペリ」より“ファンファーレ”

〔弦楽器の音色〕
芥川也寸志/「トリプティーク」より第3楽章

〔打楽器の音色〕
ブリテン/青少年のための管弦楽入門より

〔オーケストラの音色〕
エルガー/行進曲「威風堂々」第1番 ニ長調

〔交響曲の父〕
ハイドン/交響曲第101番 ニ長調「時計」より 第4楽章

〔華麗なる近代オーケストラの響き〕
レスピーギ/交響詩「ローマの松」

<問合せ>
大阪フィル・チケットセンター
TEL 06-6656-4890
(平日10時~18時 土曜日10時~13時 日曜・祝日休み)