大阪の創造拠点をつなぐ試み 芸術文化魅力育成プロジェクト2017「オオサカ・クリエイティブ・アーキペラゴ」

レポート

大阪府、大阪市共催「芸術文化魅力育成プロジェクト」は大阪の未来を担う芸術文化の若手プロデューサー育成と、大阪の優れた芸術文化の発掘、発見、発信を目指す事業です。3年目の今年は公募で選ばれた一般財団法人おおさか創造千島財団がクリエイティブ・ディレクター加藤種男さんを総合プロデューサーに「オオサカ・クリエイティブ・アーキペラゴ」を運営します。10月25日、全体の概要を発表する記者会見が大阪市中央公会堂で行われました。


(プロジェクトロゴ)

オオサカ・クリエイティブ・アーキペラゴとは、大阪府内に点在する多彩な創造拠点をつなぐ試みです。
加藤プロデューサーは冒頭の挨拶で「自らの拠点を持つ若手プロデューサーの、特定のジャンルにとらわれない多彩な創造活動こそが大阪らしさであり、多島海(アーキペラゴ)のように大阪に点在する彼らをつなぐことで大阪の芸術文化の魅力を発信したい」と語りました。

「アートには行政などが算出しがちな経済的波及効果よりも、少子高齢化社会や障害をもった人の生きがいづくり、地域社会における生活のしやすさなど数値化できないところにこそ効果があると考えています。アートと社会の間をつないでいく係がアートプロデューサーの仕事。鑑賞者を増やすというよりも、プロジェクトに関わる当事者を増やしていくのが目標」と話しました。

プロジェクトには大阪府内の五つの拠点で活動する若手プロデューサー6人が参加し、一般向けの「鑑賞プログラム」を実施します。

大阪市此花区の「FIGYA」は、元は質店の倉庫だった建物で、アーティストのmizutamaさんが運営。不定期にライブや展示を開催しています。今回はフィリピン・マニラからアーティストを招き、約1カ月の滞在制作と展覧会、ライブペイントなど開催します。「海外のアーティストが1カ月ぐらい滞在すると、思ってもみなかった地域との関係性が生まれる。そこに期待したい」とmizutamaさん。

茨木市にある文化住宅「前田文化」は、解体や改装のプロセスをアートプロジェクトとして展開してきました。「大家さん」の前田裕紀さんは「前田文化の1階部分を開かれた私道として解放するため解体作業で、その騒音自体を演奏に変える文化住宅騒音コンサートを開催します。今後、クリエイティブな大家さんが増えていけば」と語りました。

三つ目の拠点は大阪市住之江区北加賀屋エリア。文化住宅を改装、クリエイターや地域の人々がゆるやかに交流するスペースとなった「千鳥文化」と、廃工場を「もうひとつの社会を実践するための協働スタジオ」として活用、分野にとらわれない人々や組織が集まる「コーポ北加賀屋」です。プロデューサーは双方に関わる映像ディレクター小西小多郎さん。写真家西光祐輔さんが約1カ月滞在してこのエリアを撮影し、写真展を開きます。「千鳥文化の喫茶店で近隣の方と話すと、『北加賀屋には何もない』と言われます。何もないと言う人や北加賀屋を知らない人にまちの魅力を伝えられたら」

四つ目は大阪市中央区本町にある音楽を中心としたイベントスペース兼ショップのHOPKENと、さまざまなアーティストの発表の場Pulpです。HOPKENを運営する杉本喜則さんとPulpを運営する田窪直樹さんが、この2カ所と近くの寺などで様々な地域や世代、ジャンルのアーティストたちによる作品展示やライブを行います。「2人ともアカデミズムとビジネスの間ぐらいを蠢いているような表現にエネルギーを感じています。大阪はもともとそんなエネルギーのあるアーティストが多いイメージがあるのですが、そういうアーティストが減ってきたという実感があります。今回は全国で活躍するエネルギーのあるアーティストを大阪に集めて、こういうエネルギーが大事ではと提示できれば」と杉本さんが話しました。

五つ目の拠点は高槻市の梶原地域。京都に近い西国街道沿いの集落です。各地でコミュニティーをベースにしたアートプロジェクトに関わってきたフリーランスのアートマネージャー内山幸子さんが、自らが暮らす高槻のまちを耕したいと地元を探して出合ったエリアで、今年から活動を始めたばかりです。「自分が老後もここに住むかもしれないのですが、どんな地域だったらいいのか、地域の人たちといっしょに考えていけたら」と内山さん。「よしあし街道(仮)」と呼ぶプロジェクトで、地域のリサーチを通じコミュニティーにどんどん入って作品をつくるアーティスト深澤孝史さんの視点やコミュニケーションの方法を借りながら住民たちのさまざまな顔が見えてくるような場をつくる計画です。三原聡一郎さんとともに「かじわらの触感地図をつくる」というプロジェクトも実施します。


(前列左から内山幸子さん、加藤種男さん、小西小多郎さん
後列左から前田裕紀さん、mizutamaさん、田窪直樹さん、杉本喜則さん)

また「鑑賞プログラム」と並行して四つの「育成プログラム」も展開します。

ひとつは加藤プロデューサーによるレクチャー、ワークショップ。第1回のレクチャー「アートプロデューサーの役割〜起業家という視点から芸術の社会的価値を検証する」は記者会見のあった10月25日夜に行われました。

ほかに
▽11月18日(土) スペシャルトーク「いい“場”のつくり方」(北加賀屋・クリエイティブセンター大阪、北加賀屋FLEAと協働企画)
▽12月10日(日) 相談会とトークセッション「アートの助成金をもっと知ろう。」(淀屋橋・芝川ビル)
▽1月13日(土) トークセッション「事務局のクリエイティビティ特別編」(京阪なにわ橋駅地下・アートエリアB1、アートエリアB1との協働企画)
が予定されています。
詳細は今後、こちらの公式Facebookページで順次紹介されます。

https://www.facebook.com/OsakaCreativeArchipelago/