大阪アーツカウンシルでは、 2018年より、毎年 1 回、大阪芸術文化交流シンポジウムを開催してきました。第 1 回は「世代を超えて「演劇」課題を共有できるのか:現代演劇つくり手の視点から」、第 2 回は「大阪から「美術/アート」を拓 く」、第 3 回は「人と地域を育み・つなげる場:公立文化施設の現場から」と題し、毎回ゲスト登壇者を招 きました。毎回、このように実施報告書を作成して公表し、開催後も多くの方々に、シンポジウムの内容を 参考としてもらえるようにしてきました。
大阪のこれから 5 年の文化政策計画を明記した「第 5 次大阪府文化振興計画」には「文化に関わる環境づ くり」「文化が都市を変革する」「文化が社会を形成する」と三つの施策方向を示しています。大阪に限ら ず、国も各地の自治体も計画的に文化政策を実現しようとしています。一方で芸術家や芸術団体、府⺠や市 ⺠は、各々の立場から様々に文化活動に取り組み、芸術現場の状況は日々更新されていき、それは必ずしも 計画の想定内とは限りません。「アーツカウンシル」は文化政策と、変化する芸術の現場の間にある「仕組 み」です。2000 年代後半より日本で注目され各地で設置がはじまり、2021 年現在、約 30 の自治体で各々が ユニークな活動を展開しています。第 4 回のシンポジウムでは「現場の視点から「地域アーツカウンシル」 の〈仕組み〉を紐解く」と題し、各地の地域アーツカウンシル事例を通して、その仕組みがどのようなもの なのか学び、現場の視点から議論を拓きました。
また結果的に第 4 回は、はじめて府外から登壇者を招きました。実際に来阪がかなわなかった登壇者とも オンラインでつなぎました。各事例はユニークさに加えて、どの地域も熱心な取り組みであることがうかが えました。
2020 年度からの新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、芸術活動は大きな制限を受けました。芸術 家や文化団体は、改めて活動の社会的意義を問われる状況となり、少なくない葛藤もあったことと思いま す。一方で、今回紹介したように、各地のアーツカウンシルが、中間支援機能を持ち、社会における芸術活 動の意義を拓き、現場を勇気づけようと努力しています。そう考えた時、地域アーツカウンシルは、芸術を 通して未来を示すものだと、思えてきました。
大変な時期にも関わらず、各地からご登壇いただきましたみなさまに、心から感謝いたします。 また、この実施報告書が、文化芸術に関わる多様な立場の皆様に活用されることを、心からねがいます。
大阪アーツカウンシル 統括責任者
中西美穂