コラム & インタビュー | Columns & Interviews 一覧

コラム | 「開かれた能楽堂」 東欧公演へ

2016.6.3 | 山本能楽堂 東欧公演2016
・シビウ国際演劇祭に出演 公益財団法人山本能楽堂(大阪市中央区)が6月16日から21日まで、ルーマニアとブルガリアで海外公演をします。「上方伝統芸能の海外発信」として大阪市芸術活動振興事業の助成も受けています。 ルーマニアではトランシルバニア地方の古都シビウで毎年開催されるシビウ国際演劇祭に出演します。民主化革命後の1994年に本格的にスタートし、現在はエディンバラ、アビニヨンとともに「ヨーロッパの三大国際演劇祭」に数えられる大規模なフェスティバル。世界の70カ国から約350団体が参加、日本からも95年の「劇団1980」以来、串田一美さん、野田秀樹さん、平田オリザさんら様々な演劇人や劇団が参加してきました。古典芸能はこれまでに歌舞伎「平成中村座」や狂言の公演がありましたが、能は今回の山本能楽堂が初めてだそうです。 ・ブルガリア人留学生が東欧と縁結び 山本能楽堂の初めての海外公演は2011年、ブルガリア。大阪大学大学院で学び、山本能楽堂でも修業していたブルガリア人留学生ペトコ・スラボフさんが結んだ縁でした。 ペトコさんは母国でコンピューター工学を修めた後、ソフィア大学日本学科で学び、2005年に大阪外国語大学に留学。能に魅せられます。いったん帰国後、08年に再来日して能楽師に入門を志願しましたがなかなか受入れてもらえず、最後に巡り合ったのが山本能楽堂の当主・山本章弘さんでした。ひたむきに能を学ぶペトコさんは「家族同然の存在」になりました。 「師匠にぜひ母国を見せたい」とペトコさんは2009年に山本さんをブルガリアに招きました。この時にソフィア大学などで開催したワークショップが好評で、翌々年に公演が実現しました。2013年にはスロバキア、2015年には再びブルガリアで公演、ソフィア国立歌劇場で現地の俳優や学生と一緒に舞台をつくって現地で大きく報じられました。 「東ヨーロッパは民主化後、ODAで日本のお金が入ったこともあり、日本への関心がとても高いのです」と山本佳誌枝・山本能楽堂事務局長。「でも、これまで日本の伝統芸能公演はほぼ西ヨーロッパばかり。うちは東ヨーロッパで、現地の方々と交流しながら長く続く関係をつくっていこうと考えました」 ペトコさんは2014年に帰国し、ソフト開発会社を営みながら、山本能楽堂の海外駐在的な存在として公演コーディネートにも活躍しています。スマホで遊びながら能を学べる無料アプリ「お囃子先生」「We Noh」も開発、リリースしました。 ・多彩な人々が集う能楽堂 山本能楽堂は昭和2(1927)年の創設時から「開かれた能楽堂」でした。当時の大阪には能をたしなむ商人や経営者が多く、能楽堂は社交場だったそうです。初代の山本博之さんも、もとは能をたしなむビジネスマン。山本家は京都で江戸時代は両替商、明治維新後は銀行を営みましたが、章弘さんの祖父に当る博之さんが知人の借金を被って会社をたたまざるを得なくなり、若き日から打ち込んできた能で身を立てようと大阪に移って能楽堂を開きました。 財団法人として運営する現在も普及・啓発活動に力を入れ、能、狂言、文楽、上方舞、落語、講談、浪曲など様々な上方伝統芸能のハイライト部分を組み合わせた初心者向けプログラム「上方芸能ナイト」などを手がけています。文楽義太夫の豊竹英太夫さんは「伝統芸能といっても分野が違えばなかなか共演の機会もない。山本能楽堂は様々な伝統芸能の演者が出会う場になっています」と話します。 美術や演劇など異ジャンルのアーティストたちとの協働も得意です。2009年にアートイベント「水都大阪」で新作能「水の輪」を野外上演したことがはじまりでした。「海外公演のノウハウも美術のみなさんに教えてもらいました」と佳誌枝事務局長。今回の東欧公演も背景に美術家井上信太さんが制作した巨大な老松を配します。   今年のシビウ演劇祭は6月10日から19日まで。演劇部門には15カ国47団体が参加、山本能楽堂は最終日の19日に州立コンサートホールで「安達ケ原」を上演します。吸血鬼ドラキュラ伝説の地・トランシルバニアの人々に親しみやすいものを、と選んだ鬼女のお話です。 ブルガリアとルーマニアで大阪を紹介する英文パンフレットも配り、大阪もアピールします。(佐藤千晴)

コラム | 大阪だから実現 今年も「4大オーケストラの饗演」

2016.4.21 |
 大阪の四つのオーケストラがフェスティバルホールに再び集結します。 4月24日に開かれる「大阪4大オーケストラの饗演」は、大阪フィルハーモニー交響楽団、関西フィルハーモニー管弦楽団、大阪交響楽団、日本センチュリー交響楽団が個性あふれる演奏をぶつけ合う、お祭り感たっぷりのコンサート。「大阪国際フェスティバル」の目玉企画として昨年初めて開催され、大きな反響を呼びました。 「4オケが集まるというとてつもない発想は実に大阪らしい」と関西フィル桂冠名誉指揮者の飯守泰次郎さん。センチュリー響首席指揮者の飯森範親さんも「東京ではベートーベンの全交響曲を一日で演奏することはできても、全オケが出演するコンサートは難しい」と話します。東京には日本オーケストラ連盟正会員だけでも九つもの楽団があり、確かに物理的に困難ですね。 感覚的にも、競争相手と同じ舞台に立つことは「東京では考えられない」と大阪フィル首席指揮者の井上道義さん。「でも、大阪の感覚としてはこういうのもあり。突き詰めれば、大阪の人が面白がってくれればいい」 大阪だからこそできる全オケ共演。各オーケストラ事務局や舞台スタッフにふだんから交流があったことも実現の大きな力になりました。「昨年のスムーズな連携には本当に驚かされた。助け合って一緒にやろうじゃないかという気質が見えました」(センチュリー・飯森さん) 何より、こう言う企画を楽しむ観客の存在が実に大阪らしい、と指揮者たちは口をそろえます。 さて、第2回、指揮者のみなさんはどんな意図でどんな曲目を選んだのでしょうか。 大阪交響楽団を率いる外山雄三さんは今年85歳になる指揮界の大ベテラン。大響のミュージックアドバイザーに今月、就任したばかりです。20世紀を代表するロシア出身の作曲家ストラビンスキーのバレエ音楽「かるた遊び」を演奏します。「大響は非常に若いオケ。演出しなくても若さが出る。どうしたらより豊かな音楽をつくれるか、一緒に探求していきたい。今回はストラビンスキーをきっちり練習してきっちり組み立ててお聞かせする、それだけを考えています」 大阪フィルの井上さんはフランス音楽で勝負します。ラベル「ダフニスとクロエ」第2組曲。創設指揮者・朝比奈隆さんが力を入れた重厚なドイツ音楽のイメージがいまも根強い大フィルですが、井上さんは「大フィルを大阪のオケ、話し好きで饒舌で人生を楽しんでいこうという人々のいる地域のオケとしてとらえるなら、もっとラテン的な音楽をやってしかるべき」と考え、積極的にフランス、スペインや南米の音楽を取り上げてきました。「ラベルのような(繊細な)曲で大フィルがいい音を出せなければ話にならないと思っている」 関西フィルの飯守さんは東京の新国立劇場オペラ部門芸術監督でもあり、ワーグナーのオペラがライフワーク。今回もワーグナー、楽劇『トリスタンとイゾルデ』から「前奏曲と愛の死」です。「ワーグナーの音楽をつくるには時間がかかります。関西フィルとは約20年のお付き合い、ワーグナーの共演を重ね、時間をかけてみっちり音楽をつくっていく関係が実現しつつあります。その成果を披露したい」 センチュリー響の飯森さんは「指揮界の先輩たちの胸を借りるつもりでベートーベンの『運命』を指揮させていただきます」。2015年度からハイドンの100曲を超える全交響曲を演奏する「ハイドン・マラソン」をスタート、ドイツ音楽の和音や旋律のつくり方を探求しています。その延長線上にある作曲家としてベートーベンに取り組みたい、と抱負を語りました。 外山さんが80代、飯守さんが70代、井上さんが60代、飯森さんが50代。大阪の各オーケストラの個性と共に、様々な年代の指揮者を聴くチャンスでもあります。(佐藤千晴)      

アートイべント・ピックアップ | Feature programs 一覧

おおさかアートマップ | Osaka Art Map