コラム & インタビュー | Columns & Interviews 一覧

インタビュー | 若手プロデューサーがONPSを通じて「叶えたいこと」「企んでいること」とは?

2017.1.30 |
1月24日に「ONPS」(「芸術文化魅力育成プロジェクト2016」)の 一環として若手プロデューサー育成ミーティングが行われました。大阪府・大阪市が主催するこのプロジェクトは若手プロデューサーの育成と交流も大きな目的。3月まで毎月、ミーティングを重ねます。1月はそれぞれが何を叶えたいのか、企んでいるのかを共有することがテーマでした。 3月にフランスで開催されるストリートダンスの世界大会JUSTE DEBOUTの日本代表に選ばれたばかりのSHUNJIさん、和太鼓「飛龍」の池口誠さん、「スーパー落語」を手がける音楽プロデューサー宿利原健さん、ファッションの近藤綾香さんの4人が参加し、ONPSの総合プロデューサーである田中大爾さん、大阪アーツカウンシル委員・山納洋さんが進行役を務めました。 今年の2月の開催に向けて、打ち合わせや練習が進んでいます。その中で共有されたのが若手プロデューサーそれぞれの挑戦です。 SHUNJIさんの挑戦はブレイクダンスで2時間の舞台を行うこと。そもそもブレイクダンスのパフォーマンスは通常5〜10分程度ということですから、短距離走を2時間続けてやるようなものです。さらに1500人収容できる大きな会場でブレイクダンスをすること自体が日本ではじめてなのだとか。 池口誠さんは和太鼓とストリートダンス、DJのコラボレーションに挑みます。和太鼓のステレオタイプなイメージを払拭したいと言います。リハーサルを重ねる中でDJのテンポや音の種類の豊かさに刺激され、「今まで体験したことのないインパクトのある見せ方ができそうだと感じています。和太鼓奏者はコンサートという形を目標にしている人が多いですが、今までとは違う演出を見せ、和太鼓奏者たちにも新しい表現方法が伝わればと思っています。 近藤綾香さんはモデルの人気だけで集客する傾向のある今どきのファッションショーではなく、ダンサーが歩くように踊る今までにない新感覚のショーを企画しています。新しい見せ方を提案するとともに、ダンサーの仕事の幅が広がればと語りました。また告知宣伝を「TwitterやInstagramなどSNSだけの力でどれだけ広がるか実験したい」と狙います。 宿利原健さんは、ライブハウスで落語を見せるという今回の取り組み自体に実験的要素が高く、大きな挑戦だと語ります。 「ライブハウスのプロデューサーは、普段はイベントのオーガナイザーがやりたいことをサポートしていく立ち回りが主ですが、今回はこちらからオファーをかけています。さらに落語という伝統文化の分野とのコラボレーションでどこまでのことができるか、落語家サイドと打合せを重ねながら模索中です」 1月のミーティングでは、今回のONPSで若手プロデューサーたちが叶えたいことを語り合い、それぞれが関わる分野の文化シーンをどう見ているのか、何が問題で、どう変えたいと思っているのかを共有する時間となりました。ミーティングの後、参加者たちは「言葉にすることで思考が整理できた」「プロデューサー同士で話すチャンスがほとんどないので、大きな刺激になった」などと話していました。 ミーティング後半からは放送局の取材も入りました。今回共有された言葉が整理されて伝えられたことと思います。 (構成=狩野哲也)

インタビュー | もし自治体の悩みをデザイナーといっしょに考えるとどうなるか? 「公共とデザインのこれまでとこれから」シンポジウムレポート

2017.1.19 |
enocoで昨年12/17にシンポジウム「公共とデザインのこれまでとこれから」が開かれました。 パブリック・リデザインとは、以下の趣旨の企画です。 市町村などの自治体や市民サービスを提供する公的機関からは、日々大量の情報が発信され、数え切れないくらいのチラシやポスターなどがつくられています。しかしその制作にプロのデザイナーがどのくらい関わっているかというと、日本ではまだまだ限られていると言わざるを得ません。公共機関が発信する生活にとって重要な情報を、必要とする人々に的確に届け、社会に向けて効果的に発信するためには、もっとデザイナーの職能が活用されてよいはずです。そこでenocoでは、公共の「デザイン業務」のあり方を考えるために、自治体等のデザイン業務に関するリサーチを行うとともに、関西で活躍する5組のクリエイターと地方自治体をマッチングしてパートナーを選び、実際にデザイン制作を行ってもらうプロジェクトを進めてきました。「パブリック・リデザイン」ではその5組の制作物とデザインワークのプロセスなどを展示紹介します。 司会を担当されたenoco 企画部門チーフディレクター、高岡伸一さんは最初にこの企画のしくみを語りました。 「デザインで課題を解決することに関心のある自治体に手を上げてもらい、数多くの中から5つに絞り、それぞれの課題を別々のデザイナーに担当してもらった。直接自治体からクリエイターにデザインフィーを支払うのではなく、enocoから支払うという方法で制度の壁をクリアしました」 5組のクリエイターと自治体担当課はこちらです。 (以下、写真はenoco HPより) 鰺坂兼充さん(SKKY) × 茨木市こども政策課|「子ども・若者自立支援センター周知チラシ」 池田敦さん(G_GRAPHICS INC.) × 生駒市市民課| 「二人の門出に贈るスペシャル婚姻届」 タナカタツヤさん × 岸和田市文化国際課| 「地域アートイベントの開催告知ポスター・チラシ」 増永明子さん(マスナガデザイン部) × 八尾市市民ふれあい課| 「次の世代に伝えたい! 校区まちづくり協議会 PR チラシ」 山内庸資さん × 貝塚市人権政策課| 「ご当地キャラを活用した人権週間の周知ポスター」 具体例を2つ紹介します。 [具体例1] 生駒市市民課からは、生駒市独自の婚姻届けがつくりたいというオーダーがありました。その背景には生駒市がどういうまちなのか、なかなか知られていないという課題があるようです。 それに対してクリエイティブ・ディレクターの池田敦さんは、3年後に届く手紙をつけるという提案をしました。生駒らしさは「まちが人を大切にしている」「日常の何気ない出来事に幸せを感じられる」ではないか、という発想から生まれたアイデアだと言います。 生駒市にとってもプレスリリースの反響が大きく、生駒市のfacebookページの投稿は、普段以上に「いいね!」の数がつき、「手続き的なものを手続きで終わらせないという発想が良かった」と喜ばれていました。 [具体例2] 八尾市市民ふれあい課からは、なかなか浸透していないさまざまなまちづくりの活動を要約したチラシをつくってほしいというオーダーがありました。 八尾市市民ふれあい課を担当したデザイナーの増永さんは「そもそも八尾市が手を挙げた自治体の中で一番資料が多く、さっぱり頭に入ってこないために、造形よりも情報整理をしてあげるのが必要ではないかと考えて、八尾市の課題を担当した」と言います。 増永さんは八尾市に対し、デザインとは設計であり、「情報整理→編集→造形」といったプロセスをデザインと考えていると話し、今回必要なのはまず情報整理で、造形までのプロセスを共有することを大事にしたいと話しました。 増永さんが話したことは、デザイン分野に限らず、どんなジャンルの取り組みに対しても行政とのやりとりの中で起こりうるモデルケースなので、少し詳細に伝えておきたいと思います。 「民間の仕事は必ずターゲットを決めます。行政はターゲットを決めずに、ターゲットは市民全体になってしまいがちです。全員に届けることを意識しすぎて、全部曖昧になります。今回軸にしたことはターゲットを決めることでした」 増永さんは八尾市役所職員と配布エリアをいっしょに考えました。八尾市の人口構造を地域別に見て、子育て世帯がいる小学校近くにターゲットを絞り、その人たちがメリットと感じる活動をピックアップして紹介するようにしたそうです。「情報を詰め込みすぎても市民はほしい情報が入っていなければ読んでくれません」 八尾市市民ふれあい課の担当者は、チラシがなかなかできあがらないことにヤキモキしたものの、最後にこのプロセス全体がデザインという行為なのだという気づきがあったと話しました。 ほかにシンポジウム前半では茨木市、岸和田市、貝塚市の事例が紹介されました。 ディスカッションの中身 後半は登壇者や会場のお客さんも含めたディスカッションが行われ、以下の話題提供がありました。 イラストの二次利用のトラブル。イラストに著作権があることを知らない行政担当者が、無断でデザインを流用してしまうことがある。 何枚印刷して単価は何円なのかと費用対効果が問われるが、例えば厚みの薄い紙に印刷したフライヤーが、ラックで折れ曲がったしまうなど、そのマイナス効果は考えているのだろうか。 行政では雑多なデザインの印刷物が濫立している。 など意見はさまざま。デザインのリテラシーを学んだ人を、自治体でひとり雇うだけでも少し状況が変わるのではという意見に対して、高岡さんが神戸市のクリエイティブディレクター、山阪佳彦さんを紹介しました。 「現在はデザインのクオリティチェックができる人がクリエイティブディレクターひとりで、全部相談を受けてやっていると、量が多すぎて”きた球を打ち返すだけ”になっているので、究極的にはデザイン課という部署ができるのが理想的です」とお話されたそうです。 このシンポジウムで最も興味深かったのは、生駒市市民課に対する制作物はデザインフィーのわりに数が多すぎるという指摘でした。 enocoから支払われるデザインフィーは5人とも同額です。生駒市へのデザイン提案は最終的に広報戦略にまで及び、婚姻届のデザイン以外にポスターや記念のバックパネルケースなども制作されました。 担当された池田さんは「ハードワークですが、やりきろうと考えました。デザインは0を1に変えるのではなく、1を10にすることができることを知ってもらいたかった」と言います。 これに対して増永さんは、仕事を引き受けていくらでも作業すると、結果として作業量によってフィーが変わっていくことを行政の方に理解してもらえなくなる恐れがあると指摘しました。 行政とクリエイターの一対一の事例では見えてこなかったことが、五対五になることによって相対的に浮き彫りになった好例だと思います。 発注主としての行政と、コンペで手を挙げた業者との間柄では見えてこなかったことが、行政とクリエイターが同じ土俵に立つことで見えてくると感じさせてくれたシンポジウムであり、事業だと思いました。 みなさんはこれをデザインだけの課題だと思われますか。 (構成=狩野哲也)

アートイべント・ピックアップ | Feature programs 一覧

おおさかアートマップ | Osaka Art Map