コラム & インタビュー | Columns & Interviews 一覧

コラム | 「ローカリティ×表現」の可能性

2016.7.22 |
「『大阪的表現』ということ」をテーマに「うめきたTalkin’About」が7月14日、グランフロント大阪の大阪ガス(株)エネルギー文化研究所都市魅力研究室で開催されました。21名が参加、意見を交換しました。 大阪アーツカウンシルは、「大阪のローカリティ(地域性・固有性)に着目した表現」が持つ可能性に注目しています。 毎回、異なるテーマを掲げ、興味・関心を持った人たちが自由に集い、語り合う“サロン”である「Talkin’About」という場で「大阪的表現とは何か」を考えてみたいと、今回の企画が生まれました。 まず最初に、大阪アーツカウンシル統括責任者・佐藤千晴さんより、以下の話題提供がありました。 ・世界の超一流を集めるフェスティバルが、大阪にもかつてあった。たとえば初期の「大阪国際フェスティバル」は大物アーティストの来日公演が看板だった。こういうフェスには潤沢な予算が必要だが、いま、大阪はそういう状況にない。また、大阪には市民・民間による自発的なプロジェクトがすでに多く存在し、ビッグネーム依存型のフェスには人が集まりにくくなってきている。 ・一方で近年「地域アート」が盛んになってきている。越後妻有アートトリエンナーレ、瀬戸内国際芸術祭など。アートフェスが、山の中や離島に新たな価値を生み出している。 ・大阪には豊かな芸能の歴史がある。お笑い、コナモンなどのステレオタイプで語られがちだが、大阪府域を広く見渡したときには、地方色ある表現があり、それが大阪の新たな魅力を創出する可能性がある。 ・「大阪は都会であり、同時に田舎である」。大阪のローカリティに立脚した小さな表現、小さな磁場を集積させていくところから、大阪的なものを表現していくことも可能ではないだろうか。 参加者のみなさんからは、以下のようなご意見をいただきました。 ・世界の都市ランキング34位、インバウンド観光客が1100万人。そういう国際的な大阪が、これから何をしていくのかを考えるべき。 ・そもそも大阪という場所では、作品が機能しない。それは批評が大阪では根付いていないから。大阪では、批評より「盛り上がる」ことが大切。 ・気になるのは「人材」。今後の表現活動を担う若手・学生の活動の広がりが弱くなってきている。 ・作品を作っても、観たことのある人だけが観ている。全く見たことのなかった作品と出会うチャンスを作らないといけない。 ・地域の違いよりも、個人の違いが大きいのでは。地域のテロワールよりも、作り手の個性。 ・むりやり特殊性を出さなくても、大阪に住んでいる自分たちが面白いと思うことをやればいいのでは。 ・地域性については、表現者が考えるのではなく、編集する側(プロデューサー・批評家・メディア)が意識し、編集し、世に送り出すというのはあるだろう。 ・自然に出てくるもの、個人の強い思いから始まっている、強度のあるものを上手に編集できれば。 ・民間企業や市民がアートを支えているというのが、大阪的では。 ・大阪では、ボランティアの人たちの力を活かして拡げていくことがもっと必要。 ・「大阪」のネガティブなイメージを、いかにプラスにできるか。 大阪には、文楽をはじめとする上方芸能もあれば、能勢の浄瑠璃、八尾の高安能など、地域固有の伝統芸能も残されています。ファンク、ソウル、ブルースやストリートダンスなど、海外由来でも大阪で深く愛されているものもあります。 また、地域を拠点に長く続けてきた結果、固有の文化と呼べる芸術文化活動も存在しています。さらに、サイト・スペシフィック(場所の固有性)を意識した表現・作品については、現代アートの分野で盛んに行われ、演劇においても、地域演劇という流れが生まれつつあります。  大阪アーツカウンシルでは、大阪における文化的固有性を幅広くとらえ、「ローカリティ×表現」の可能性を探っていきたいと考えています。(山納洋)

コラム | 「開かれた能楽堂」 東欧公演へ

2016.6.3 | 山本能楽堂 東欧公演2016
・シビウ国際演劇祭に出演 公益財団法人山本能楽堂(大阪市中央区)が6月16日から21日まで、ルーマニアとブルガリアで海外公演をします。「上方伝統芸能の海外発信」として大阪市芸術活動振興事業の助成も受けています。 ルーマニアではトランシルバニア地方の古都シビウで毎年開催されるシビウ国際演劇祭に出演します。民主化革命後の1994年に本格的にスタートし、現在はエディンバラ、アビニヨンとともに「ヨーロッパの三大国際演劇祭」に数えられる大規模なフェスティバル。世界の70カ国から約350団体が参加、日本からも95年の「劇団1980」以来、串田一美さん、野田秀樹さん、平田オリザさんら様々な演劇人や劇団が参加してきました。古典芸能はこれまでに歌舞伎「平成中村座」や狂言の公演がありましたが、能は今回の山本能楽堂が初めてだそうです。 ・ブルガリア人留学生が東欧と縁結び 山本能楽堂の初めての海外公演は2011年、ブルガリア。大阪大学大学院で学び、山本能楽堂でも修業していたブルガリア人留学生ペトコ・スラボフさんが結んだ縁でした。 ペトコさんは母国でコンピューター工学を修めた後、ソフィア大学日本学科で学び、2005年に大阪外国語大学に留学。能に魅せられます。いったん帰国後、08年に再来日して能楽師に入門を志願しましたがなかなか受入れてもらえず、最後に巡り合ったのが山本能楽堂の当主・山本章弘さんでした。ひたむきに能を学ぶペトコさんは「家族同然の存在」になりました。 「師匠にぜひ母国を見せたい」とペトコさんは2009年に山本さんをブルガリアに招きました。この時にソフィア大学などで開催したワークショップが好評で、翌々年に公演が実現しました。2013年にはスロバキア、2015年には再びブルガリアで公演、ソフィア国立歌劇場で現地の俳優や学生と一緒に舞台をつくって現地で大きく報じられました。 「東ヨーロッパは民主化後、ODAで日本のお金が入ったこともあり、日本への関心がとても高いのです」と山本佳誌枝・山本能楽堂事務局長。「でも、これまで日本の伝統芸能公演はほぼ西ヨーロッパばかり。うちは東ヨーロッパで、現地の方々と交流しながら長く続く関係をつくっていこうと考えました」 ペトコさんは2014年に帰国し、ソフト開発会社を営みながら、山本能楽堂の海外駐在的な存在として公演コーディネートにも活躍しています。スマホで遊びながら能を学べる無料アプリ「お囃子先生」「We Noh」も開発、リリースしました。 ・多彩な人々が集う能楽堂 山本能楽堂は昭和2(1927)年の創設時から「開かれた能楽堂」でした。当時の大阪には能をたしなむ商人や経営者が多く、能楽堂は社交場だったそうです。初代の山本博之さんも、もとは能をたしなむビジネスマン。山本家は京都で江戸時代は両替商、明治維新後は銀行を営みましたが、章弘さんの祖父に当る博之さんが知人の借金を被って会社をたたまざるを得なくなり、若き日から打ち込んできた能で身を立てようと大阪に移って能楽堂を開きました。 財団法人として運営する現在も普及・啓発活動に力を入れ、能、狂言、文楽、上方舞、落語、講談、浪曲など様々な上方伝統芸能のハイライト部分を組み合わせた初心者向けプログラム「上方芸能ナイト」などを手がけています。文楽義太夫の豊竹英太夫さんは「伝統芸能といっても分野が違えばなかなか共演の機会もない。山本能楽堂は様々な伝統芸能の演者が出会う場になっています」と話します。 美術や演劇など異ジャンルのアーティストたちとの協働も得意です。2009年にアートイベント「水都大阪」で新作能「水の輪」を野外上演したことがはじまりでした。「海外公演のノウハウも美術のみなさんに教えてもらいました」と佳誌枝事務局長。今回の東欧公演も背景に美術家井上信太さんが制作した巨大な老松を配します。   今年のシビウ演劇祭は6月10日から19日まで。演劇部門には15カ国47団体が参加、山本能楽堂は最終日の19日に州立コンサートホールで「安達ケ原」を上演します。吸血鬼ドラキュラ伝説の地・トランシルバニアの人々に親しみやすいものを、と選んだ鬼女のお話です。 ブルガリアとルーマニアで大阪を紹介する英文パンフレットも配り、大阪もアピールします。(佐藤千晴)

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