ネット時代の「いい場」とは? 大阪でトーク[2017/11/18]

インターネットで様々な情報が行き交う時代に、リアルな「場」が持つ可能性とは?
Osaka Creative Archipelago(芸術文化魅力育成プロジェクト2017)の一環としてトーク「いい〝場〟の作り方」が11月18日、大阪・北加賀屋のクリエイティブセンター大阪で開催されました。ゲストに個性派書店として知られる「BOOK MARÜTE」(高松)の小笠原哲也さん、「ON READING」(名古屋)の黒田義隆さんを迎え、カルチャースポットとしての「店」の可能性を語り合いました。

企画・司会進行は、Osaka Creative Archipelagoに参加している若手プロデューサー、杉本喜則さん(HOPKEN)と田窪直樹さん(Pulp)。大阪・堺筋本町で物販・イベント・展示の複合スペースを運営、様々な発信をしています。

彼らが「いい〝場〟を作る人」として選んだのはブックショップを営む2人でした。

「BOOK MARÜTE」も「ON READING」もギャラリーとの複合スペースです。古着屋やギャラリーを営んでいた小笠原さんは「地元を面白くするスペース、自分がいたいスペースを考えたら本屋だった」が、黒田さんは「自分が手に取りたい本を置いた書店が名古屋になかったから」がスタートの動機でした。小笠原さんは、古着の買い付けに行ったアメリカで、書店とカフェが地域の拠点となっている光景を目の当たりにした経験もあったと話しました。

どちらも本を売るだけでなく展示、イベントなど人が集まる仕掛けを積極的に展開しています。「場作りは店、プレーヤー、お客さんの三要素がないと始まらない」と小笠原さん。黒田さんは「本屋は多様性を担保する場所。本の魅力を立体的に伝えるために、どうしてもギャラリーもやりたかった」と言います。

「MARÜTE」は高松港から歩いて10分ほどの倉庫街、「ON READING」は名古屋駅から地下鉄で15分ほどの東山公園エリアにあります。ともに都心部ではありませんが、SNS経由で海外から訪ねてくる人もいます。どうしたらそんな場が作れるのでしょう?

「地域の魅力を掘り下げることがポイント」と2人は口を揃えました。


小笠原哲也さん(左)と黒田義隆さん

「名古屋市が東京、大阪など主要8都市で自分の住む都市についてブランド・イメージ調査をしたんですけど、名古屋は『知人に来訪を奨めるか』というポイントでは最下位でした。名古屋で面白いことがいっぱい起きているのに、それを面白がれていない。まちの魅力をちゃんと紹介していくことが大事だと思う」と黒田さん。
小笠原さんは、讃岐名物のうどんを例に出しました。「学生時代はうどんは日常の食べ物で、おいしい店を探すという発想もなかった。でも大人になって、出汁のことなどを知ると、ファストフードに比べてすごい、香川っていいな、と感じる。地元を好きになると、もっと面白くしたくなります」

ネットやSNSで情報が手に入り、交流もできる現在、店というリアルな場の持つ意味は何なのか? 大阪の杉本さんが問いかけました。

小笠原さんは「今や個人がメディアの時代で、タウン誌は機能していないのに、個人のローカルで面白いインスタグラムにはものすごい数のフォローがある。が、SNSはつながりが見えず、大きな動きがつくりにくい」と指摘しました。

黒田さんは「目指すは情報発信なので、出版やウェブサイトの運営もやっていますが、店は人が来てくれる、出合いがある」とリアルな場の強みを挙げます。

現在の大阪について、田窪さんは「2000年代はアンダーグラウンドやサブカル系の面白い場がいっぱいあって『大阪サイコー!』だったが、かなり衰退している」と感じており、外から大阪がどう見えるか?と質問しました。


杉本喜則さん(左)と田窪直樹さん

「大阪は楽しいイメージだけどなあ。住吉大社近くのEDANEとか、中崎町のiTohenとか面白いスポットもあるし」と言う黒田さんに、田窪さんは「つながれていないんです」。スポットはあってもつながりがないという現状認識です。

小笠原さんは「大阪は宿泊施設が高くて泊まりにくい。香川も瀬戸内国際芸術祭の期間は同じ問題がある。安く泊まれる場所があれば、滞在時間が伸びるから化学反応が起きやすくなるのに」。その発想をすでに実現、昨年、高松で遍路宿だった旅館をリノベーションした「book&travel ゲストハウスまどか」を開業しました。

 会場からは「都会でなくても〝いい場〟はつくれるでしょうか?」と質問が出ました。
 「不便なところだから人が来ないということはない。ただ、仕掛けはいる。スキルと個性が重要」と小笠原さん。黒田さんは「自己実現で好きなものを奥だけでは店は成功しない。続く店には理由と役割がある。何が足りていないのか、リサーチを」とアドバイスしました。
(佐藤千晴)